それさえもたぶん退屈な日々。

ぼんやりしてて自動移行されました

『マテリアルゴースト』(葵せきな)読了に伴って私的まとめ

あくまで自分のためのまとめなのでたたみたたみ。

楽しめた楽しめなかったの話

一番楽しめたのは、短編集収録の『幽霊屋敷の夜』かな。
次が『夢みる少女じゃ、結構いられる』のオチ。
あとは、五巻の神無本家におけるやり取りがわりと好き。


キャラクターに関しては深螺以外は好みじゃなかったなあ……。あえてあげるなら、次点が雨森?

読了できた理由

読んだきっかけは酷評に関する波及の広がりを見たからなのだけれど*1、それでも設定はともかく話に関しては「明らかに好みじゃなさそう」と思いながら手を伸ばしたので、「出来るだけ勢いで読みきろう」という目論見のもと全巻一気買いを*2
でも目標は三巻まではなんとか、だったかな。
で。
実際三巻まで読んだら、むしろ設定の不条理さに勢いで四、五と読めた感じ。そして、その腹が立った勢いのまま昨日のエントリに*3


そして昨日の段階では実は0は読まないで置こうかと思っていたんだけど、今朝、結局手にして家を出たので移動中に読了。最終的に0が一番気に入って終わったという意外な結末に落ち着いた。

伏線と偶然と必然

三巻以降が面白いと思う人が多い理由は昨日、三巻のところで書いたように、理由がなんであれ今まで単なる不条理な設定でしかなかったところにようやく「主人公本人以外にきちんと理由がある」ということが提示されたところにあるんじゃないかな。


で、この設定に関しては
伏線に関する注意事項*4

  1. 伏線というのはさりげなく、しかしそれなりに張っておくのがベター。
  2. ただし緻密であればあるほど先が読めてしまう。
  3. さりげなさすぎる伏線は唐突な印象しか与えない。
  4. 過去に使われたことのある伏線は見破られやすい。

のうち、三つ目が該当してるんじゃないかな。
この三つ目って、一度でも自分の書いた話*5を人に読ませた事がある人は嫌というほど実感したことがあると思うのだけど、すごく陥りやすい罠だったりする。書いている側は「何もかもわかっていて」書いているので、読み手がわかってくれないなんて事はないとつい思ってしまう*6


主人公の「死にたがり」はずっと「なにか変」と読み手に印象を与えてはいるんだけど、真相に至るための手がかりが、ふっと思い返すと0の『入学前夜に満ちる月』ぐらいにか散見できない*7
物語的驚きの展開は必要だけれどそれでももう少し手がかりが欲しかった。


偶然と必然については、作中にきちんと説明が。
ただ、主人公が地元から離れているのに主人公の妹一人、幼馴染二人、先輩一人、計四人が偶然*8に近い形で集まっちゃうのはちょっとね。

登場人物の構成比

男女比はもうネタにしたので、もう一つの気がかり事項を。


いくらラノベとはいえ大人の存在が無さ過ぎる
顧問の存在しえない「帰宅部」という設定は、そもそも排除するためかとは思うがそれにしてもあまりにも少なすぎる。
ほぼゼロ*9
それでもなんとかうっすらと登場人物を通して語られる親像がほんとうすい。
ここまで徹底して排除されているといっそすっきりはするけど、その分視点が偏りすぎていてバランスが悪いようにしか感じなかった。成長ものにはある程度子供たちに賛同しつつ*10、釘をさす大人がいてくれないと、成長したといわれても井の中の蛙にしか見えないんだよ。
だからこそ少しでも年上の深螺が出てきたあとの方が安定感があるんだろう……きっと。

最終的に

普段読まないものを読んだという充足感だけは得た、かな。
あとやっぱハーレムもの苦手……。
ていうか、ハーレム物でもいいけど男女比はそれなりに保ってくれるか、好みがいなかったらもうアウトだと実感した……*11

*1:それより前に話題になっていた元の『学校の階段』はあらすじを読んでも心動かされなかったので見なかったことにした。

*2:探しに行くのが面倒だったのできちんと原価で買った。

*3:この勢いになんか覚えがあるなあと思ったら以前、『神様のメモ帳』(杉井光)でおなじことしてた。

*4:わりとよく言われていることなので、特に引用もとは無し。

*5:小説に限らず。

*6:この見極めが私はとても下手。

*7:読み落としがありそうではあるけれど。

*8:それなりに必然ではあるけれども。

*9:先生とか駅員とかは、個性が要らないのでキャラクターとしてはカウント外。

*10:いや、賛同は無くてもいいんだけど。

*11:でもとっさにハーレム物が思いつかない……。